あらすじ
ぼくのお父さんが食堂を開店した。
名前は「しのび食堂」。
ぼくは、化け忍者であるお父さんの手伝いをしにいった。
開店すると、早速、妖怪のお客さんがやってくる。
「ぬるぬるして ねばねばして
べたべたしたもの ちょうだい」
お父さんは、すぐさま料理を作って出した。
お客さんである、妖怪べとべとさんは、お父さんの料理に大満足で、妖怪のお客さんを連れてきてくれた。
さあ、一気に忙しくなってきたぞ……!
ところ狭しと妖怪が登場し、その妖怪たちがおいしそうに妖怪料理をもりもり食べる、そんな絵本です。
本日開店! 妖怪食堂!
お父さんが食堂を開店。
手伝いに行く、ぼく。
お父さんが忍者だ。
なんの説明もないのだが、忍者だった。
一体どういうことなの……という追随を許さずに、オープンした食堂にお客さんがやってくる。
お客さんが人間じゃない。
何の説明もないのだが、明らかに妖怪だった。
それに特別びっくりした様子もない、「ぼく」。
「ぼく」はどこからどう見ても普通の男の子の姿をしているのだが、お父さんが忍者なのだから、きっとそういう耐性もついているのだろう。自分でも説得力がないとは分かって書いている。
なんたって、タイトルが『妖怪食堂』なのだから、妖怪だってお客さんで来るだろう。そうじゃないと、タイトル詐欺になる。
記念すべき最初のお客さんが注文したものは……
「ぬるぬるして ねばねばして
べたべたしたもの ちょうだい」
料理名ですらなかった……。
それでも忍者お父さんは戸惑わず、へいお待ちと料理を出す。
絵に描かれた情報を見るに、恐らく、料理名は「(お蔵入りしたくない)オクラいれネバ丼」だろう。
……どんな料理だ。
最初のお客さんはとても満足したのか、次々とお客さんをつれてきてくれる。
お店は大繁盛である。
この食堂、出す料理がどれもへんてこで変わったものばかりだ。
まず、ネーミングセンスがすごい。
「のどごしいっぽん太うどん」
「おはぐろべったりタコスミパスタ」
「ビビンババア」
「ばけニャーシューメン」……等々。
妖怪の名前をもじったものもあれば、駄洒落でキマっているものもある。
面白そうな食堂だ。
お父さん忍者は、「ドロンドロン」と料理を作るらしい。
……どうやって作っているのかまったくわからん。
いろんな楽しい料理が次々と登場し、いろんな妖怪たちがその料理をもりもりと食べていく。
ネーミングセンスがすごい料理ばかりだが、その食べっぷりを見ているとおなかが減ってくるようだ。
そうして、開店一日目を無事終えた、という結末になる。
これは、次々と登場する妖怪や面白い料理を見て楽しむ絵本だろう。
物語的な展開はない。
絵は力強いタッチで、生き生き伸び伸びと描かれている。
食堂内に貼った料理メニューの書き込みも細かくで面白く、妖怪が好きで駄洒落の面白さが分かる子なら、紙面をつぶさに眺めて楽しむだろう。
次々に登場する妖怪と料理が楽しい
字も少なく、絵がメインで楽しめる一冊。妖怪好き、駄洒落好きの子におすすめしたい。
古典妖怪が次々出てくるので、楽しく読むことが出来るだろう。
しかし前述したとおり、物語らしい物語はないので、妖怪好き、駄洒落好きの子以外はあまり興味を持たずに終わってしまうかもしれない。読み聞かせも、一考してからがいい。
対象は幼児、低学年。
中学年では、内容が幼く映ってしまう子も出てくるだろう。