あらすじ
ラクダの背中にあるこぶはどうしてできたのか?
その理由を語る絵本。
まだ世界ができて間もないころ、動物たちは人間の仕事を手伝っていた。
しかし、ラクダは人間の手伝いをせず、自分勝手、好き勝手にのんびりしていた。
見かねたほかの動物が、働くように言うが、ラクダは「ふふん!」と鼻先で笑うだけ……。
人間はラクダを見限ろうとし、ラクダのぶんの仕事を他の動物たちにお願いすることにしたが、納得がいかないのは動物たちだ。
そこへ、砂煙を巻き上げて現れたのは、砂漠の支配者であるジン。
動物たちは、ラクダが働かないとジンに相談し……。
ラクダのこぶは三日間、食べずに生きていけるように……
怠け者のラクダのキャラクターが一貫していて、逆に感心した。
世界ができてから、動物たちは人間の手伝いをせっせとしているらしいのだが、このラクダだけは働かない。何と言われようと働かない。他の動物に「働けよ(意訳)」といわれても、「ふふん!」と鼻先で笑うだけだ。
彼は、月曜日から、のんびりのんびり、自分の好き勝手に生きている。
結局、このラクダは砂漠の支配者であるジンに説教を食らって、魔法でこぶをくっつけられて、働くことになったのだけども、それでもやっぱり彼はのんびりのんびり、のんきに過ごしているという。
ラクダ、いいじゃないか。
その生きっぷり、嫌いじゃない。
そもそもラクダの顔は元からとぼけた顔をしていて(失礼)、せかせかと働くようなイメージではない。実際はあの暑い砂漠の貴重な移動手段のひとつではあるんだろうけど、あののんびり食べ物を咀嚼するところを見ていると、「こいつはのんびり屋なんだろうなあ」と勝手に思い描いたりもする。ラクダ、ごめん。
誰から言われても、「ふふん!」と応じないさまは、小憎たらしさを通り越して、感心するほどである。
このメンタルの強さ、すばらしい。
ラクダのキャラはこれはこれで私は好きなのだが、たまったもんじゃないのは周囲である。
ラクダのぶんのしわ寄せが来るのだから、面白くない。あいつだけ楽しやがって……と思うのも無理はない。
当然、チクりが入る。このあたりが妙に生々しい。そして、とうとう、砂漠の支配者ジンの耳にまで入ってしまうというわけだ。
世の中はもうちょっとのんびり動いてもいいんじゃないかと思うのだけど、ラクダひとりがのんびりしているだけでは、世の中はのんびりしたスピードにならない。逆に周囲が困ったり、嫌な思いをするだけだ。とかくこの世は生き辛い、とはよく言ったもので、みんなが思い切って、いっせーのっでのんびりになれば……
……世の中回っていかなくなるか。
ラクダはジンに三日間食べなくても生きていけるこぶをつけられてしまい、その三日間働けとどやされてしまったけど、ラクダの生き方はある意味うらやましくもある。マイペースに、のんびりと。ジンにどやされた後も、のんびりマイペースに仕事をしているためか、いまだにこぶはついたまま。ラクダ、いい根性である。いっそのこと、ラクダになりたい。そうだ、ラクダになろう。みんな、のんびりすればいいのだ。
……でもやっぱり、ラクダみたいな人ばかりでは、世の中はうまくいかなくなるんだろうなあ。
リアルな絵と、そこそこの文章量
絵本にしてはやや多めの文章量と、繊細な絵があいまって、対象年齢は高そうである。
読んでみたところ、小学校中学年から、といったところだろうか。
子どもが読むと、怠け者のラクダが罰を受けるのは当然、という感想を持ちそうだが、忙しいおとなが読むと……感想が変わりそうだ。