絵本の森

『みどりのトカゲとあかいながしかく』──トカゲとながしかくの戦いはどのようにして終わったのか

あらすじ

みどりのトカゲと、あかいながしかくは戦っていた。
互いに、一歩も引かず、戦い続けていた。

あるとき、一匹のトカゲが言った。

「なんのために たたかっているの?」

そう質問したトカゲは、あかいながしかくに押しつぶされてしまう。
これをきっかけに、争いは熾烈を極め……

 

長い戦いに終止符を打って

みどりのトカゲと、あかいながしかくが戦っている、という何とも斬新な世界観から始まるこの一冊。

みどりのトカゲはまだしも、あかいながしかくが何なのかよくわからない。
あかいながしかくは、あかいながしかくである。
目や鼻、口もない。ほかにはなにもない。

終盤、あかいながしかくがしゃべっているので、このあかいながしかくはどうやら生き物らしいということはわかるのだが、作者がなぜ、トカゲの争う相手に「あかいながしかく」という選択をしたのかわからない。

トカゲに対立する生き物ならいくらもいような気がするのだが、みどりのトカゲとあかいながしかくが戦っているという、一見意味不明なインパクトはすごいものがある。

「あかいながしかく」という意味不明さに、トンデモな絵本かと思ったら、思った以上にメッセージ性にあふれた作品だった。

この絵本は、争うことのむなしさや、むごさを描いているのだ。

「ねえ、なんのためにたたかっているの?」

……という問いかけをした一匹のトカゲを、うるさいとばかりに無惨におしつぶすあかいながしかく。
まるでそれは、子どもに都合の悪いことを聞かれて、問いかけ自体を黙殺するおとなのように見えてならない。

トカゲを押しつぶされて、争いは熾烈を極めた。
やられたぶんやり返し、やり返されたぶん、やり返し……。
勝利も敗北もつかないまま、双方、疲れはてるまで戦って……。

何のために戦っているのだろう。
こんな戦いに、意味があるのか?
こんなに争いが長引いて、勝敗がつくというのか?

すると、あかいながしかくのひとつが言う。

「たたかいは もう、うんざりだ!」

そうして、双方は歩み寄りの道を模索し始める。
一生懸命話し合って、「いっしょになかよくくらすこと」を決める。

平和は訪れた。みんな、うれしそうだ。
互いに、もう戦う気力も残っていなかったのもあっただろうが、争いは終結した。

 

しかし……
最初のトカゲの問いがあった時点で、トカゲとあかいながしかくは気がつくことができなかったのだろうか。
犠牲を払った上での、争いの収束……。

そこには、わたしたち人間の歴史と重なるものがあるように思えてならない。

ただ、裏表紙の裏、最後のページに、あかいながしかくとトカゲがキスしている一コマが描かれていることに、私は希望を感じる。

 

文章は少なく、とてもシンプル

あかいながしかくという謎の物体が登場し、トカゲと争っている……という設定はとても斬新だ。
あかいながしかくは、本当にそのままのながしかくなので、表情がわからない。それも作者のねらいかもしれないが、何にせよ、インパクトがかなりある冒頭である。

文章は必要最小限に抑えられ、一行や二行ぐらいしかない。
字を読めるようになった子なら、一人で読めるだろうが、テーマを含めて理解するようになるには、低学年からぐらいだろう。