あらすじ
おじいちゃんは、いつも同じことしか言わない。
「それでいいのだ……」
何があっても、どんなことがあろうとも、「それでいいのだ……」。
──おじいちゃんはどうしておもしろいことを言わないのかな?
──おもしろいことなんかないのさ。
子どもたちがそう話しているのを偶然聞いたおじいちゃん。
翌朝、突然、おじいちゃんは咳払いをしてから、昨夜起きた出来事を話し始めました……。
話し下手のおじいちゃんが話してくれた話
コミック調の軽妙なタッチの絵で書かれたこの絵本は、話も軽妙でおもしろい。
本文があるのにも関わらず、それに平行する形で絵に書き文字で台詞が書かれていたり、二コママンガのようなページがあったり、表紙の見た目からは想像できないコミカルな作品だ。
何を言っても、どんなことがあっても、「それでいいのだ……」としか言わないおじいちゃん。
何をしてもどんなことがあっても「それでいいのだ……」とファンタジーに出てくる賢者のようなことしか言わないので、子どもたちは、「おじいちゃんっておもしろいことなんてない毎日だから、おもしろいことを言わないのだ」と影で話す。
まあ、「それでいいのだ」って、ある意味では、気が楽になるいい言葉だと思うけども。
しかし、それを聞いていた当のおじいちゃん。
これではいかんな……と思ったのかどうかは謎のままに、翌朝、突然、おじいちゃんは咳払いとともに、「あのな……」と子どもたちに向かって話を始める。
このときのおじいちゃんが、新聞で顔を隠しながら、なのでとんでもなくほほえましい。
おじいちゃんの話はへんてこで、途方もなくて、荒唐無稽な話だった。
でも、すごい冒険の話だった。
全部話終わったあと、「この話、どう思う?」と子どもたちに尋ねる。
うん、わかります。
一生懸命考えた話がウケたかすべったのか確かめたくなりますよね。
子どもたちの様子を伺っているのがビシバシ伝わってきます。
絵を見ていると何となくわかるんですが、このおじいちゃん、「それでいいのだ」という賢者なんじゃなくて、話し下手か、子どもとどう接すればいいのかわからなかっただけなんですよね。
うん、わかるなぁ。わかる。
それで、結局、子どもたちのおじいちゃんの話の評価はどうだったのか?
子どもたちの返事はもちろん──やっぱり、それでしめなきゃ、このタイトル、嘘になるよね!
それにしても、タイトルを見て、赤塚不二夫を思い出したのは私だけではないはずである。あの言葉もいい言葉である。
軽妙なタッチの、ほほえましくなる話
話し下手おじいちゃんが、子どもたちにおもしろい話をしようとして、話を始めるという、子どもではなくておじいちゃんのほうがほほえましくなるという一冊。
コマ割を用いたり、書き文字で台詞を書いたりと、マンガのようなページもある。
文章の量は決して多くないのだが、上記のような構造のページを多く含むため、読み聞かせは難しい。
肝心のおじいちゃんの話がおもしろいかどうかは……
読んだ人に判断をお任せしたい。