絵本の森

『犬ロボ、売ります』──犬のロボットが幸せになるまで

あらすじ

新米発明家のトムは、家事も炊事もできる犬のロボットを開発した。
しかし、強引ともいえる理由で発明としては認められず、破棄しろと言われてしまう。

ロボ・ワンを捨てることも壊すこともできないトムは、誰かに売ろうと考えた。
そして、雑貨店に犬を売る旨の広告を出してもらいます。

ロボ・ワンを買いにきたのは、ヨゴレータ一家。
ヨゴレータ一家は、一家全員が面倒なことはしないという一家で、とても汚れた家に住んでいました。ヨゴレータ一家は、ロボ・ワンに家事炊事のすべてをやらせようと考えていたのでした。

ヨゴレータ一家に引き取られたロボ・ワンは、ついに自分もふつうの犬として扱ってもらえると喜んでいたのですが、ヨゴレータ一家はロボ・ワンを便利なロボットとしてこき使うだけ……。

それでも犬としての喜び(散歩や、頭をなでてもらうこと)がいつの日か与えられると信じて、毎日家事に炊事にとがんばってきたロボ・ワンでしたが……。

 

ロボ・ワン、幸せになれ!

本物の犬のように見えるけど、ロボットの犬、ロボ・ワン。
ふつうの犬と違って、家事全般オールオッケーで、お手伝いさんとしても活躍できる能力を秘めている。
しかし、犬の心も持ったロボ・ワンは、ふつうの犬としての生活を送りたがっていた。

そんなこんなで理由があって、ロボ・ワンは、家事をいっさいしないヨゴレータ一家に引き取られるのだが、ロボ・ワンはそこで犬としてかわいがられるどころか、犬としてすら扱ってもらえず、ただのお手伝いロボとして酷使されてしまう。

しかし、ロボ・ワンの有能ぶりは、すばらしい。名前のとおりに汚れきった家を、ピカピカにし、ご飯だって作るのだから。

開発者は天才なのではないか。
「犬が家事をするなんておかしい」「お手伝いさんの仕事がなくなるからだめだ」「犬は噛むから好かん」という理由で、ロボ・ワンは発明として認めてもらえなかった経緯があるのだが、かなり無理がある理由では……?
細かいことについついツッコミを入れてしまうのは悪い癖である。

 

はてさて、このロボ・ワン、本当にけなげだ。
いつか、本物の犬のようにかわいがってくれることを夢見て、一生懸命に働く。でもこき使われるばかりで、誰もロボ・ワンをかわいがってくれない。キッチンでエプロンを頭からかぶり、泣いている彼を見て、読んでいるこっちもかなりつらい気持ちになった。

ヨゴレータ一家は本当にどうしようもない一家だ。理由があるならまだしも、ただ単になまけているだけで、家事は誰もいっさいしない。
ロボ・ワンも便利な家事ロボットとして扱う始末だ。
読んでいると、めらめらとヨゴレータ一家への憤りがわいてくる。

 

物語は起承転結がはっきりとしており、最後はハッピーエンドで終わる。そのことに心からほっとしながらも、あのヨゴレータ一家に天誅が下るところを見たかったという思いが残る。
ロボ・ワンが幸せになったからいいようなものの、もしそうでなければ、あのヨゴレータ一家に、なにかしらの制裁を切に望む気持ちでいっぱいになるところだった。

 

この本を読んだ後、自分は犬飼いなので、飼っている犬を目一杯かわいがろうと思った。この本を読んでいると、いっそう、犬がかわいくなってくる。

まあうちの犬は、家事をするどころか、スリッパは寝床に持ってはいるし靴下は噛んで穴をあけるという、だいぶ困ったちゃんの犬なのだが。

 

読みやすい児童書

話の展開も起承転結がはっきりしており、読後もすっきりした終わり方をする。
文章も読みやすく、ヨゴレータ一家のロボ・ワンへの扱いに憤りを覚えながらになるが、おおよそ楽しく読むことができるだろう。

低学年から中学年向け。
字は大きめである。