あらすじ
2012年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた国際会議の中で、ウルグアイのムヒカ大統領が行ったスピーチを、子どもにも分かりやすくまとめた絵本。
人類がどのような幸福に向かって進んでいくべきかを真摯に問うた絵本。
「豊かさ」と「幸せ」について
本当の豊かさとは、いったい何なのだろう。
豊かさを求めていった先が、今の地球である。
今の地球の状況は、豊かだろうか?
豊かさを求めていたはずなのに、この問いかけには首を傾げざる得ない。
私たちは豊かになっていっているのだろうか?
豊かさを求めた結果、環境は悪化し、深刻なものとなってしまった。
世界には、飢えている人もいれば、毎日毎日食べていくのがやっとの人
もいる。
豊かさとは、いったいなんだろう。
本書は、ウルグアイの大統領、ムヒカ大統領のスピーチを子ども向けに分かりやすくまとめたものである。
豊かさとは、ほしいものがどんどん手に入って、何不自由なく生きていけることをいうのだろうか。
人よりもっとものを手に入れるために、お金をかせぎ、いかにして利益を得るために周りを利用するかを考える。そんな中で、「心をひとつに、みんないっしょに」などという話ができるだろうかと彼は言う。
確かにそうである。
自らの利益を得るために、虎視眈々と周囲を見ている状況では、「みんないっしょに」豊かになることなど無理な話である。
そこでまた、豊かさとはいったい何なのかを考える。
彼は、地球の環境の危機ではなく、人の生き方に危機が訪れているのだと言った。
ハッとさせられた。
私は今まで、豊かな社会に生きていると思っていた。
だが、ひとつほしいものを手に入れると、また次のほしいものが現れて、切りがない。先のわからない未来に心は休まるときがなく、自分が持っていないものばかりが気になって仕方なくなってくる。
こんな状態を、豊かだと言えるのだろうか。……いや、とうてい、心豊かだとは言えない。
「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっととほしがることである」
私は貧乏に当てはまるのだ。
このままでは、いずれ私はとても心の貧しい人間になってしまうだろう。
今の生き方を変えなければならないのではないか。
言うのは簡単だが、これまでの意識を変えるのはとても難しい。
今持っているもので満足する、ということの難しさ。
彼のスピーチは、私たちの生き方に警鐘を鳴らす。
私たちが目指す「幸せ」の定義を改めて考えてみるべきだと訴える。
「幸せ」とは何だろう。
私にとっての幸せとは──
今持っているものに満足し、身の丈以上のものはほしがらず、お金のために他を蹴落とすことのない、心穏やかな毎日のような気がしている。
最近、とてもよく思うのだ。
いつも何かに追い立てられているような毎日に、なんだか少し疲れてきている。
ある程度のほしいものはお金を出せば買えるために、次から次へと新しいものを求めることにも何となく嫌気がさしてきた。だって切りがないのだ。倒しても倒しても、欲望は復活し、あれがほしいこれがほしいと訴えかけてくる。それらに耳を貸すのにも疲れてしまった。
今あるものでこじんまりと、生きていきたいのだ。
彼のスピーチを読んでいると、目指すべき幸せとは何か、豊かさとは何かを深く考えさせられる。そして、自分が見つけだした幸せのために、今の生き方をどう見直していけばいいか、考えずにはいられない。
物質の豊かさと、精神的な豊かさがうまく均衡を保ってはじめて、幸せというものが目の前に現れるのではないか。
浅はかながらも、そんなふうに私は思った。
絵本のていをなしているが
絵本のていをなしているが、内容は人の「豊かさ」や「幸せ」、どのようにしたらみんなが幸せになれるか、といったスピーチを分かりやすくまとめたものである。
高学年、中学生からが対象だろう。
またおとなが読んでも考えさせられる。
読み聞かせする種類の本ではなく、一人で読んで考えを深めていく種類の本である。