あらすじ
うしのガイコツまおうは、悩んでいた。
自分はいったい、何者なのか?
牛なのか、ガイコツなのか、魔王なのか?
そこへ、訪れた、旅する白猫。
彼は言った。
牛か、ガイコツか、魔王のどれかを選んだらいいんじゃない?
それはいい考え。
うしのガイコツまおうは、早速、白猫の案を試すことにした……。
自分はいったい何者なのか?
「うしのガイコツまおう」は、自分が何者なのか思い悩んでいた。
自分は、「牛」なのか、「ガイコツ」なのか、「魔王」なのか……
「魔王」っていうのは、第三者から「あいつは魔王だ」と呼ばれたときと、「魔王になってやる」と思ってなった場合にしか名乗らないんじゃないかな……と思うんだけど、どうだろう……。
そもそも、「うしのガイコツまおう」と三要素も積みすぎである。キャラが濃い(だがそこが好き)。
「うし」は見た目が牛だからわかる。
「ガイコツ」も見た目からわかる。
・・・魔王ってどの部分……
魔王……
初めてであった白猫が、じゃあ三つの中から一つ選べばいいんじゃない、と言われて、実践してみることに。
それぞれ牛、ガイコツ、魔王を体験してみて、楽しいことは楽しかったけど、なんだかしっくりこない「うしのガイコツまおう」。
魔王に至っては、雨降りの魔法を使えるのが楽しくて、トランス状態に陥ってしまって大変なことになってしまうわけだけど、「うしのガイコツまおう」さん、魔王に向いているのでは……?
最後は、「白猫の友達」という何者かを手に入れるわけだけれども、自分が何者かというのは、永遠のテーマではないかとも思う。
自分が何者かを知るにあたって、人は安心するのだ。
「うしのガイコツまおう」は、「白猫の友達」という結論に落ち着いて安心した。
細やかなタッチで描かれた「うしのガイコツまおう」は、なんだかいつも自信がなさげで頼りない。それが、終盤になって、答えを見つけたときの彼は、少しだけ立派になって、しっかりした顔つきをしている。
自分が何者か、答えを決めたからだ。
それが「牛」でもなく「ガイコツ」でもなく、「魔王」でもない、「白猫の友達」という、自ら考え出した結論だ。
心穏やかになった「うしのガイコツまおう」の姿は、魔「王」にふさわしい品格と優しさを兼ね添えているかのようだ。
裏表紙の、二人分のお茶がほほえましい。
彼らのささやかな友情が続くことを願ってやまない。
自分が「何者」であるか──
人は、誰だって、自分が何者かを考えているような気がする。
その答えは、簡単に見つかるようにものではない。ひょっとしたら、ずっと見つからないままかもしれないものだ。
人間は、「うしのガイコツまおう」のように、何者かのはっきりした選択肢を持っているわけではないから、なおさらだ。
人間というのは、つくづく複雑怪奇であることだなあ、と思った。
「うしのガイコツまおう」が好きになったのならおすすめ
「うしのガイコツまおう」の姿が個性的で、かなりキャラ立ちしているので、彼が好きになったのなら、ぜひおすすめ。
ちょっと頼りなげで猫背なところもかわいい。
白猫も感情豊かに描かれていてかわいい。
自分は何者か、というテーマを持ちながらも、その話の内容はとても分かりやすく書かれている。
小学校低学年向け。
ガイコツや、魔王が登場するが、怖い話ではない。
話が起伏に富んでいて、クライマックスも用意されているため、読み聞かせにも向きそうである。
しかし、「ザッザ ゴウゴウ ピカリャーレ」なる呪文が頭にこびりついて離れてくれない。どうしてくれよう。