絵本の森

『干し柿』──干し柿を紹介した写真本

干し柿の歴史や作り方をシンプルに説明した本

自分の恩師が、いろいろと昔ながらことを知っており、世間知らずだった自分にいろいろとやって見せてくれた。
今も世間知らずのまま過ごしてきてしまったが、そのとき、恩師がやって見せてくれたもののひとつが、「干し柿」だった。

「干し柿」という存在自体は知っていた。知らない日本人はいないだろう。……いないと思いたい。
ただ、実は自分は柿という果物が苦手で、必要に迫られなければ口にしない。むろん、今まで「柿を食べなければ死ぬ!」などという必要に迫られたことは一度もないので、柿は数年、食べていない。

干し柿は食べたことがある。
恩師が作った干し柿だったのだが、このころもうすでに自分は柿が嫌いだということを自覚していたので、干し柿を薦められて大いに困った覚えがある。結局、断るに断りきれず、無理に口にしてみたのだが……これが実に甘くておいしい代物となっていた。
柿を干すというだけで、こんなに味が変わるとは、と驚いたものだった。

それで自分は干し柿が好物になった……となれば恩師との美談になるのだが、実際は「食べようと思えば食べられるがすすんで食べようとは思わない」というぐらいに落ち着き、今に至る。

 

本書『干し柿』は、渋柿から干し柿を作っていく過程を、丁寧に、美しい写真とともに説明している。
干し柿の柿の皮むきを、手作業でやっているということは知らなかったので驚いた。てっきり機械化されていると持っていたのに。

ずらりと軒につり下げられた柿の様子は、見ていて何とも美しい。だいだい色の光があふれて、秋という自然の美しさを目の当たりにした思いである。

甘くておいしい干し柿を作るには、手間も暇もかかる。油断していると虫がたかるし、気候によっては腐りもする。雨の日などは濡れないように気をつけなくてはいけない。

干した柿を揉んでいた恩師の姿が目に浮かぶ。当然のことのように行っていたあの行為にも、意味があったのか……などと感慨に浸ってしまった。

近頃は空気も汚れてしまい、一般家庭で干し柿を作るのにはよっぽど気を使わなければいけない、と言っていたが、一般の家庭でも渋柿を買ってきて干し柿を作ることはできる。渋みが甘みに変わる昔の人の知恵を、過程を追って体験するのもいいかもしれない。

 

干し柿の写真が美しい

一斉にずらりとつり下げられた干し柿の写真は圧巻である。
干し柿初挑戦の前か後に読むといいかもしれない。

読み聞かせもできるが、時期が限られる絵本ではある。
物語性はない。