絵本の森

『コロッケです。』──退屈だったコロッケがお店を逃げ出し旅に出た

あらすじ

ある日、コロッケ屋さんのコロッケは、退屈だったので、お店の人の目を盗んで店を逃げ出しました。

コロッケはころころ転がり、いろんなところへ……。

あっあんなところにコロッケが!

 

コロッケの旅が壮大なものになるとは、このとき誰も知らなかったのである……。

 

ワンフレーズがリフレイン

コロッケがコロッケ屋さんを飛び出して、いろんなところに転がっていく、というだけの話なのだが、なぜだかこれがおもしろい。

コロッケがころがっていくときに、なぜか

コロッケ ころ ころ ころっころ~

という謎のフレーズが出てくるのだが、この本を一度でも音読すると、このフレーズがしばらく頭の中から離れなくなる。気がつけば口に出しているといった感じで困ったような、おもしろいような。

 

ころころ転がったコロッケは、いろんなところに転がっていって、なぜかいろんなものに擬態する。誰もコロッケのことを追いかけていないのだが。
擬態したコロッケを見つけだし、その擬態の様子に思わず笑ってしまう、という流れの絵本である。しかも、ページが進むごとに、擬態のレベルが高くなっていくところになぜか笑ってしまう。

そう、なぜか、だ。
この本は何とも言えない空とぼけた魅力にあふれていて、なぜか虜になってしまう。

 

そして、コロッケの旅はだんだん、スケールが大きくなっていき、ついには……いやいや、そこまでやっちゃう!?といったオチである。この終わり方、嫌いじゃない。むしろ、ここまでスケールがでかいほうが、すがすがしい気持ちになる。

コロッケ ころ ころ ころっころ~

……いかん、また頭の中でリフレインを始めた。

 

コロッケが転がっていく先は……

文章量がとても少なく、一人読みもできるシンプルな内容となっている。スケールが大きくなっていくお話は、読み聞かせにも向いているが、幼児向けから低学年向けだろう。

コロッケの旅が壮大になっていくところを大いに楽しみたい。