あらすじ
ある雪山で、男性が雪女に遭ってしまい、今や命をとられようとしていた。
場面変わって夜、ハナコの部屋に小さな男が現れて、「私と一緒にきてください」とお願いされる。その必死な様子に、ハナコは了承する。
雪の降る道すがら、小さな男は「大切な人が困っている」と話す。ハナコは詳しく聞き出そうとしたが、小さな男は話してくれなかった。
仕方なく、ハナコは彼についていくが……。
雪の夜に妖怪を目撃する、不思議な妖怪絵本。
雪舞い散る冬の妖怪録
すべてがモノクロで描かれた、雰囲気ある一冊。
雪の季節に現れる妖怪が目白押し。妖怪好きには楽しい一冊だろう。絵も大迫力で、恐ろしげだ。
話は、ある男性が雪山で雪女に行き遭うところから始まる。
雪女に出会った者はたいてい、凍死させられる。たまに気に入った男がいると命をを助けたりもするようだが、今回の男性は雪女のお眼鏡にかなわなかったようだ。
この雪女の、顔のドアップが迫力満点。妖怪好きは、ここでテンションがあがる。かなりのインパクトなので、怖がる子も出てくるかもしれない。
そして場面は切り替わる。
真っ暗な中で、スポットライトを浴びたかのように、小さな男が現れる。まるで舞台のようだ。
そうして、夜中に起こされたハナコは、小さい男に力を貸してくれと頼まれて、了承するのだった。
モノクロで描かれた絵は、寒々としていて、雪の白さ、寒さを表しているようだ。
ハナコは行く先々で、怪異(妖怪)と出会う。
それはハナコが気づかないモノであったり、ハナコにも見えるモノであったり……案内人に小さな男がいるものの、現れる妖怪たちはみな恐ろしげで迫力がある。ページにいるだけで、ハナコには関わらない妖怪も数多くいる。さながら、読者は妖怪巡りをしているかのような展開だ。
そして、ハナコたちは雪山へ……。
ここからの展開が硬派な絵柄とは裏腹に、妙にコミカルでおもしろい。
果たして雪女におそわれていた男は、見越し入道のクシャミで命を長らえたのであった……。
前半の寒々とした空気、そして迫力満点な妖怪の姿に見入っていると、後半の迫力のある絵柄はそのままながら、コミカルな展開に思わず笑ってしまう。
特に、最後のページの雪女の姿! これはぜひとも、一度見ていただきたい。
雪女に凍死させられそうになっていた男が、ハナコのお父さんに当たるのかどうかはちょっとよくわからない。
でもいずれにしても、ハナコは一人の命を救ったのだ。偶然に。
妖怪好きには楽しい一冊だが
次々と現れる妖怪たちだが、妖怪名が注釈としてついているわけではないので、巻末のほうに登場した妖怪の名前がまとめられたページがあるが、どれがどの妖怪なのかわかりづらい。
しかも、結構マニアックな妖怪が水木御大とは違う角度から描かれているので、筋金いりの妖怪好きでなければすべての妖怪名を当てることは難しいのではないだろうか。
白黒で統一された雰囲気ある妖怪録だが、怖いものが苦手な子には絵が怖いと感じるかもしれない。リアル調の絵柄である。
小学校低学年向けか。
怪談といえば夏のイメージだが、寒い雪の日の怪談も乙なものである。