あらすじ
猫のいやはやは、猫ができて当然のことができません。
空が飛べないのです。
猫が当然にできることが、どうして自分にはできないんだろう……。
飛べないことを気にするいやはや。
がんばって飛ぶ努力をしてみるのですが……。
猫が空を飛ぶ世界
ほかの猫は空を飛べるのが当たり前なのに、猫のいやはやだけが空を飛べない……。
本書を一読したとき、「え!? この世界では猫が空を飛ぶんだ!?」という衝撃を受けた。単に飛べないというだけなら、猫でなく鳥などに設定すればいいのに、あえて猫を選んだ作者のセンスに個性を感じる。
個性といえば、主人公の名前も個性的だ。「いやはや」。どうしてこんな変わった名前をつけたのだろう。
その独特な世界観は、ほかにはない個性を放っている。
猫は飛ぶものなのに、いやはやは飛べない。
周りは「猫は飛ぶものなんだから飛べるよ」と励ましてくれるが、できないものにとってはとても残酷な言葉である。
「できて当たり前」「当然できること」というのは、意外に世間にあふれている。女性だから○○ができて当たり前。男性だから……おとなだから……もう小学生だから……
気にしていないふりをして、心の中ではとても気にしているいやはや。
できて当然のことがどうしてできないんだろう。
そこにきて、猫は飛ぶものなんだから飛べるよ、という言葉は、飛べない自分は猫ではないのかという不安をあおってくる。
そこに、友達のブタのポーティアの言葉が優しい。
「いやはやには、ほかのことができるわ」ポーティアがいいました。「イモムシをあつめてるのよ。おはなしをきかせてくれるし、チーズオムレツもつくれるし……」
できないことでなくて、できることに目に向ければ、「ひょっとして自分は出来損ないなのではないか」という不安も和らぐ。自信にもつながっていく。
なにもできない人なんて、この世の中にはいないのだ。
誰にでもできることがあって、できないことがある。それが、いやはやにとっては「空を飛ぶ」ということだったというだけのこと。
終盤、いやはやは、「自分は泳げる」ということを発見する。これはほかの猫にはできないことだった。
自分にもできることがあった、と実感するいやはやには、「空を飛べない」という負い目にも似た不安は見えない。
「猫は空を飛ぶもの」「猫は泳げないもの」
常識に縛られていては、いやはやは傷つき続けるだけだった。
~できて当然、というのは、本当は確かじゃないのだ。大多数ができること、というだけで。
ひとによってはできないことと、できることがあるということを知っていれば、生きづらさもだいぶ和らぐのではないか。
いやはやの友人、ブタのポーティアは、いやはやに泳いでみればどうか、と勧められて、最後に言う。
「やってみようかな」ポーティアが いいました。
「だれに わかるっていうの?
ブタも およげるかもしれないじゃないの」
個性が光る一冊
設定も個性的ながら、絵もまた個性的。何ともいいがたい魅力にあふれている。
テーマが少し難しいが、お話としてだけでも楽しめる。
文章が絵本というより、小説のような書き方をしている。
小学校低学年向け。