絵本の森

『ジュマンジ』──日常が非日常に変わる、不思議なすごろく

あらすじ

留守番をすることになったピーターとジュディ。
ひょんなことから、「ジュマンジ」というすごろくを拾いました。

はじめはつまらなさそうだといっていたピーターでしたが、退屈には勝てません。
退屈していたピーターとジュディは、家の中で、「ジュマンジ」やることにしました。

その「ジュマンジ」が、世にも不思議なすごろくで、とんでもないことを引き起こすともしらないで……

 

おもしろおそろしいすごろく、「ジュマンジ」

『ジュマンジ』のストーリー自体と出会ったのは、実は映画だ。今は亡きロビン・ウィリアムズの出演作だ。
偶然、この絵本を見かけなければ、同タイトルの絵本が出ているとは知らなかったろう。

映画『ジュマンジ』は結構好きな映画で、時々、思い出したかのように見たくなる映画の一つだ。

絵本『ジュマンジ』のほうは、映画と比べて、むろん、話は短い。映画の長さと、絵本の32ページを比べるものでもないだろう。

読んでみて、話のおもしろさはそのままだった。
「ジュマンジ」という不思議なすごろくは、退屈な日常をたちまちエキサイティングな日常に変えてくれる。

まあ、ライオンに追いかけられたり、サイの群れが暴れるのを、エキサイティング! ……と言えるのならば。

「ジュマンジ」というすごろくゲームは、止まったますめのことは必ず起きる。それがどんなに現実に起き得ないことでも、だ。
荒唐無稽な事態をを引き起こす「ジュマンジ」は、さいころを振るのにもドキドキはらはらだ。さあお次は何が待ち受けるか……味方は運しかない。

家の中だというのに、突如現れるライオン、猿、サイ、へび、その他いろいろ。雨だって降る。一回休みになると本当に眠りこけてしまう。それもこれも、変なますめに止まってしまったからだ。

わあ、すてきなゲームだ、やりたい!……なんてとんでもない。
私の運の悪さは折り紙つきだから、「ジュマンジ」をクリアできるかどうか。最悪なますに止まって、とんでもないことになるのだ、きっと。

この絵本は、左に本文、右にイラストという構成をしており、絵の多めな児童書ともいえるぐらいに話の密度が高い。

お話のおもしろさは確かだが、イラストの濃密さにも注目したい。
全ページモノクロで描かれたイラストはとても繊細でありながら、写実的に非日常と日常を見事マッチングさせている。暖炉の上でとぐろを巻く大蛇とか、ピアノの上にいるライオンとか。特に、サイの群れが暴れるシーンは迫力があってすごい。

 

しかし、注意書きに

二、大事なこと。いったんこのゲームをはじめたらだれかがジュマンジ(ゴール)につかないかぎり、ゲームはぜったいにおわりません

……なんて書いてあったら、普通、イヤな予感しかしないものだけどなぁ。本当、退屈って何をさせるかわからない。

 

絵本というより児童書に近い

サイズは絵本のサイズですが、構成と文章の量は児童書程度です。
中学年からが対象でしょう。

設定、話の展開はおもしろいのですが、イラストがすべて繊細なモノクロ画なので、残念ながら目を引く華やかさがありません。そのため、数ある絵本の中で、この本を選ぶ子は少ないかもしれません。

読み聞かせはおすすめしません。
内容が長いので、どうしても読み聞かせする場合は、何度かに切ってすべきです。

前述しましたが、お話はおもしろく、これからも読みつがれていってほしい本です。

映画もだいぶ古いものですが、こちらも家族で見られるおもしろいものとなっていますので、ぜひ見てみてください。

 

2018年にリメイク版が公開されるようです。