あらすじ
短編集。
マルコとミルコという双子の男の子が登場する。
彼らの得意技は、カナヅチを自由自在に操ること。彼らはいつもカナヅチを肌身はなさず持っている。
短編のいずれも、マルコとミルコが主人公になっている。
「ついてない泥棒」
マルコとミルコが留守番をしていると、ガスの修理屋さんがきた。
二人は修理屋さんが泥棒だと見抜き……。
「お化けのでる城」
田舎に古い城を買ったという、リッカルドさんの悩み事は、夜、幽霊が出るということ。
それを聞いたマルコとミルコは幽霊に出ていってもらうよう、交渉しようとするが……。
「赤ちゃんはふたごが大好き」
近所に住んでいるメルリさんから、子守をお願いされたマルコとミルコ。引き受けたのはいいものの、赤ちゃんが大泣きしだして……。
「おそるべき強盗団」
マルコとミルコは学校に行く途中、銀行の周囲が野次馬でいっぱいなのに気づきます。
野次馬から話を聞いたところによると、銀行強盗犯デモニックが、銀行を襲うと予告したらしいのです……。
「なぞの潜水艦」
夏休みをディオミラおばさんの住む島で過ごすことになったマルコとミルコ。
ある朝、二人が海に潜っていると、潜水艦が現れ、海底の岩山に謎の箱を置いていくのをみました。中身が気になる二人でしたが……。
「いたずら坊やのおてがら」
テレビ番組の西部劇の音声をテープレコーダーに録音したマルコとミルコ。強盗が銀行に押し入るときの音声を使って、二人はいたずらを思いつきました。
そして二人は、お父さんの経営する電気屋へ……。
「悪魔なんかこわくない!」
留守番をしながら、マルコとミルコは宿題をしていました。宿題は、「悪魔について」というテーマでの作文。
二人は相談しながら、宿題を進めます。悪魔についてなにを書けばいいのか考えた末、「悪魔は頭が悪いです」と書こうとした二人の元に、なにやら不穏な影が……。
カナヅチを自由自在に操る双子の話
いや、笑った。本当に笑った。
以前、『グレッグのダメ日記』でも笑ったと書いた気がするけど、この手のハチャメチャコメディ、好きなのかも。
深夜に読んでいたから、笑いをかみ殺すのに大変だった。
双子の登場する作品はたくさんあるけれど、カナヅチを調教した双子っていうマルコとミルコしかいないと思う。
そもそもカナヅチを調教って書いてる時点で、「どういう意味かわかんないんだけど」って思うかもしれないけど、本当に彼らはカナヅチを調教して自由自在に操れるという設定なのだから仕方ない。
つまり調教したってことは……ブーメランのように投げて返ってくるようにしたりとか、ねらった的に確実に当たるようにするとか、そういう訓練を施したってことだ。
うん、自分でも書いててよくわからない。突拍子もなさすぎて。
でも、これが本当におもしろい本なのだ。
双子がカナヅチを自由自在に操れるってところだけがおもしろいんじゃなくて、この物語全体がどっか空とぼけてて、皮肉屋で、ユーモアにあふれているのがとても魅力的なのだ。
もちろん、マルコとミルコの大人びていて理屈屋でへらず口のところもおもしろいけど、二人に限らず登場人物がみんなどこかユーモアがある。
この物語は三人称で進んでいくのだけど、地の文ですらユーモアがあるのだから笑ってしまう。
たとえばこうだ──
マルコとミルコは、前にもお話ししたとおり、ふたごの兄弟です……(中略)……でも、ふたりを見分けるのはかんたんでした。(中略)一方、マルコとミルコの両親を見分けるときには、電気店を経営しているのがお父さんのアウグストさん、婦人用の帽子店を経営しているのがお母さんのエメンダさん、とおぼえればいいのです。ほらね、かんたんでしょ?
うん、そうだね、すごく簡単だね!
そんな回りくどい覚え方じゃなくてもいい気がするけどね!
(マルコとミルコは持っているテープレコーダーで西部劇を録音した段に)きょうのストーリーは、とりわけドキドキするものでした。遠いアメリカの西部で、覆面をしたギャングが、銀行に押し入るのです。どうやら、アメリカの西部というのは、毎日のようにギャングが銀行に押し入るところのようです。
だとしたら、日本はOTAKUとHENTAIの国になってしまうよ!
思わず笑ってしまった箇所をあげるとキリがないが、こんな調子で隙あらば笑わせようとしてくるので油断ならない。
銀行強盗犯デモニックが登場するところでは、小さい「ッ」が入るのが最近の強盗犯のはやりらしい、デモニックは凶悪犯だから、「ッ」が二つ入ってもおかしくない、と受けて、双子はこう答える。
「だったら、デモニッックだね」(太字ママ)
そのとおりだろうね!
口達者なマルコとミルコ。生意気にも見えるが、不思議と悪ガキのようには見えない。むしろ活発で利口で、生き生きとしていて、親しみやすい子どもたちとして映る。
「ママのいうことをよくきく子」と言われて、ショックのあまり倒れる二人。「ママの言うことを聞くなんて……」と意気消沈する二人。本当にどうかしている(賞賛の言葉だ)。
今日もマルコとミルコはカナヅチを手に、ミラノの街をハッピーに過ごしていることだろう。
実におもしろくておかしい物語だった。
短編集で、話につながりはない
短編集で、一つ一つが完結した話のため、どこから読んでも支障はないが、収録話が本の終盤になると、だんだん面倒くさくなるのか、ミルコとマルコの紹介が投げやりな感じになっていておもしろい。最初から読むのがおすすめ。
教訓よりも「笑い」に重点を置いた作品。
中学年から高学年が対象。
おとなが読んでもおもしろい。
最近笑えていないかたは読んでみては。