あらすじ
にんじん大好きのうさぎのジャスパーは、お気に入りのにんじん畑があった。
その畑のにんじんは大きくて甘くて、おまけにジャスパーの食べ放題。
ジャスパーはしょっちゅう、畑のにんじんを食べていた。
にんじんを食べることが何よりも幸せだったジャスパーの毎日はとてもハッピーだった。
そう、「やつら」が来るまでは……。
まるで古いホラー映画を見ているような
本当に、これにつきる。
まるで古いホラー映画を見ているかのような構成だ。
デザインも演出も、フォントも、みんなよってたかって古きよきB級のホラー映画をオマージュしている。
主人公のうさぎ、ジャスパーが、野生の(?)にんじんを食べまくったせいで、にんじんたちがジャスパーにつきまとう……といった、話の筋もB級ホラー映画にありそうな内容である。
本の全ページがニンジン色をのぞいてグレースケールで表現されているため、昔の白黒映画を見ている気分になる。その手の趣味がある人には、おもしろい趣向だろう。
つきまとうおばけにんじんにおびえるジャスパー。
家の倉庫の中、寝室、窓の外!
大変だ大変だと騒ぐも、誰かが様子を見に来るとおばけにんじんはニンジン色した別の中に成り代わっている……。
「見間違えたんでしょ」
「ねぼけてたんでしょ」
ホラー映画あるあるである。
しかし確かにおばけにんじんはジャスパーにつきまとっていた。ジャスパーの見間違いなんかではない。でも誰も信じてくれず、助けてくれない。
そして最後には、哀れ、ジャスパーはおばけにんじんに……!
……なんてオチではなく、ジャスパーはおばけにんじんに敢然と立ち向かい、自分の力で安心できる毎日を手に入れたのである。
……あれ? ん?
考えてみてほしい。
おばけにんじんがどうして、ジャスパーにつきまとい始めたのか……。
オチに一ひねりあって、実におもしろい絵本である。
つるつるてかてかの光沢ある紙を使用しているので
つるつるてかてかの光沢紙を全本文に使用しているので、指を切りやすそうな印象を受けた(奥付にも手を切らないよう気をつけてくださいという旨の注意書きがあった)。
恐ろしげな表紙と黒が基調のデザインだが、内容は恐ろしくはない。むしろ、かわいらしいオチである。
白黒時代のホラー映画風を装っているのが個性的だ。
対象は幼児から低学年向けに思われる。
前半はおばけにんじんがつきまとうターンだが、後半はジャスパーのターン。
怖い話ではないので安心されたい。