あらすじ
フランクという、二つ年上の友人がぼくにはいる。
ぼくは、フランクを親友だと思っていた。フランク本人はどう思っているかはわからない。
でも、ぼくにとっては、フランクは親友だった。
フランクは、おとな──たとえば、ぼくのパパや、友達のヨンテのお父さんからは、あまりいい風に思われていなかった。
でも、ぼくはフランクを親友だと思っていた。今も思っている。
少年二人の友情を等身大で描く
子どもには子どもの世界がある。
昔は子どもだったのに、私たちはおとなになると、子どもの世界の繊細さを忘れてしまう。
それがおとなになるということだよ、と言われると、そうなのか、と思わざるを得ないのだけど、あの繊細な世界はいったい、どこに行ってしまったのだろう。
それでも、子どもたちを観察していると、子どもの世界というのが何となく伝わってきて、なんだか不思議な気持ちになる。
たとえば、おとなからすれば、やんちゃで乱暴で手に負えない子がなぜか子どもたちからは支持があること。
おとなからすれば、何でも素直に言うことを聞く子が、子どもたちからは不評なこと。
私たちおとなは、子どもを一側面で判断しがちだが、よく考えてみれば子どもだっていろんな面を持っているのだ。
子どもは私たちが思うほどすべてにおいて純真ではない。
だが、それでいて驚くようなところで純真だったりする。
繊細そうで図太かったり、図太そうで繊細だったりするから、おとなたちは戸惑う。
本書は、そんな子どもの繊細さ、したたかさ、傷つきやすさ、年上に対するあこがれなどを多側面から見事に描いている。
それはとても現実味にあふれていて、楽しいばかりでない子どもの世界を垣間見せてくれる。
本書に登場するフランクのような子は、だいたい、おとなに嫌われる。またあの子が……と眉をひそめるものだ。
だが、そういう子に限って、子どもたちは支持する。おとなは首をひねるばかりだ。あんな子のどこがおもしろくてつきあうのだろう、と。そこが、おとなと子どもの見ている世界が違うことの証左だろう。
フランクの違う一面を見たとき、初めておとなは思い出すのだ。
子どもの繊細な世界の存在に。
読後は、何ともすがすがしい気分になる。
少年たちの友情の青青としたところに、いつか過ぎ去ってしまったものを思い出すかのように。
子どもの友情や友達づきあいを描いた作品
子どもの感情の機微を繊細につづった一冊。
主人公と、年上の友人フランクの交流を中心に、日常を描いている。大きな事件や起伏に富んだ話の展開はないが、微妙な心の動きがシンプルな文章で描写されている。
中学年でも十分に読めるが、高学年向けだろう。