絵本の森

『まないたにりょうりをあげないこと』──料理を味見させ続けていたら、まないたはどうなるの?

あらすじ

人気のレストランで働く一人のコックは、目撃してしまった。

なんと、調理場に置いてあるまないたが、食材をこっそりつまみ食いしていたのだ!

その夜、コックは、事実を確認すべく、まないたを調査した。すると、まないたがしゃべりだし、つまみ食いしていたことをあっさり認めた。

その上で、まないたは、食材じゃなくて完成した料理を食べたいとコックに頼み込む。コックは断りきれずに、了承したのだった……。

 

まないたのキャラ立ちがすばらしい

いるいる、このまないたみたいな、甘え上手で調子のいい人! でもなぜか憎めないキャラだから、何となく許されてしまうのがうらやましい。

そんな調子のいい甘え上手なキャラクター、まないたが出てくるのはこの本。

『まないたにりょうりをあげないこと』、タイトルからして目を引きつけられる。まないたに料理をあげないこと、当然じゃん。……どういうこと?って。

読んでみて、思ったのが前述のとおりのことである。とにかく、まないたのキャラクターが立っていて、おもしろい。
個性的な絵柄のイラストも相まって、とてもポップでコミカル調の絵本に仕上がっている。この個性的な絵が苦手でなければ、本書は思わず笑える絵本の一冊になるだろう。

まないたは、ついついこっそり、自分の身体の上に置いてある食材をつまみ食いしているのだという。まあ……野菜の端っことか、料理に使えない部分とかを食べるぐらいなら便利かなぁと甘く考えていたら、なんとまないたは、料理を食べたいのだと頼んでくる。

つまり、まな板で材料を切っている間は料理は完成前の状態だ。
だから、まないたは完成した暖かい料理を食べたいんだよ~と、もはやチャラ男そのままのノリでコックに頼んでくる。頼まれたコックはまないたに甘えられて、しょうがないな~とOKしてしまう。
ダメダメな関係を目の当たりにしたような気がするが、まないたの調子の良さは終盤になってさらに発覚する。本当に、このまないた、いい性格をしている。

人目を盗んで、律儀に料理をつまみ食いさせてあげるコック。描かれる様子は、まるでスパイ映画のようだ。
しかし、それも三ヶ月たって、つまみ食いさせてあげていたことが料理長にばれてしまう。

そう、まないたはとんでもなく分厚く太っていた。

三ヶ月もおいしい料理をつまみ食いし続けたため、まないたの厚さはハンパないものになっていたのだった。
まないたを使おうと思ったら、踏み台に乗らなければならないほどに成長を遂げていたのだ。

……いやいや、ふつう、誰か途中でおかしいと気づかないのか。
明らかおかしな光景になってるんだけどこれ……。

そんなこんなで、またまないたのチャラすぎる謝罪で一件落着に。
本当にもう……このまないた、調子よすぎだな!
またまないたの言っていることが、相手の足下を見ているようで計算高い。こんなまないたイヤだ……。

ハチャメチャでポップなノリが楽しい、『まないたにりょうりをあげないこと』。
タイトルの意味も、最後にわかるようになっている。

 

 

 

しかし、まないたみたいな人が近くにいたら、絶賛困ったちゃん認定されつつも要領よく生きてそうだなぁ。

 

幼児、低学年対象

対象は幼児から低学年まででしょう。
一番のおもしろい部分は太っていくまないたと、まないたの調子のよさなので、それが理解できる年齢だと楽しく読む子も出てくるでしょう。

話の展開がとても分かりやすいので、読み聞かせ映えする一冊です。