あらすじ
「ほらふき男爵」ことミュンヒハウゼン男爵が語る、勇気と知恵の冒険話。
何十羽ものカモを、猟銃を使わずにベーコンとひもで捕まえた話や、足が恐ろしく早いウサギを捕まえてみたらとんでもないウサギだった話、大きな怪物に船ごと飲み込まれてしまったが知恵をしぼって助かった話、チーズでできた島の話……
男爵の語る話はどれもおもしろくて魅力的。
……え? どうせほら話ばかりでしょうって?
いやいや、これが不思議と聞きたくなる話ばかりなんですよ。
ミュンヒハウゼン男爵の勇気と知恵の大冒険!
いやいやそれはあり得ないでしょ、とツッコミを入れたくなるナンセンス満載の話は好きだ。
ハハハ、と笑って心が軽くなるのが一番いい。
ほらふき男爵こと、ミュンヒハウゼン男爵が語る手に汗握る大冒険。勇気と知恵の旅の話を、男爵が語り口も鮮やかに話してくれる。
火打ち石がないから自分で自分の目をたたいて火花を散らし代用したとか、放った棒で一気何羽もの鳥を串刺しにしたとか、斧を投げたら月まで飛んでいって取り戻すのに難儀したとか、いやまあ本当に荒唐無稽……いやいや、実に聞いていてわくわくはらはらの大冒険である。
決して、彼はほらふきなどではない。ほらふき男爵なんて呼ぶのはもってのほか、彼に失礼である。なぜなら、彼は真実を話しているのだから! ……彼のたびたびの主張によればだが(彼は何度も何度も自分の話は真実だと主張する)。
まあ、事実は小説より何とかというし、ひょっとしたら、もしかしたら、彼が話してくれたようなことが起こる……かもしれない。
……いや、やっぱりちょっと無理があるかな。やっぱり。
彼が意気揚々と語ってくれる冒険の数々はどれも無茶苦茶……いや、想像を超えていて、「そんなバカな……」というつぶやきを何度したって足りなくなる。彼の冒険話を読んで、「そんなバカな……」とツッコミを入れない者は絶対にいない。
でも不思議なことに、彼の話も読み続けているうちに、「そんなバカな……」から、「なるほどね……」となり、「さすが、ミュンヒハウゼン男爵! 待ってました!」となっていく。不思議だ。毒されているという言葉が頭に浮かんだが、見なかったことにする。
男爵ときたら、本当に根拠なく自信満々で、時々自分は知恵者だとまで言うほどの自信過剰ぶりだけど、これがなぜかとても魅力的に映る。彼自身に嫌みがないからだろうか。どう考えても「ほらふき」としか思えないのに、次のトンデモ話を楽しみにする自分がいる。
ほら、難しいことを考えていないで、一度、男爵の知恵と勇気の冒険話を聞いてみたらどうだろう。彼が繰り出す予測不可能なお話に、いつしか虜になっていることに気がつくだろう。
エンターテイメント性が高い読み物
とにかく荒唐無稽な展開に笑いを禁じ得ない内容になっている。
そういった意味ではおもしろい読み物の側面を持っているが、戦争の話や狩猟の話がわりと出てくるので、気になる人は気になるかもしれない。ただしだいたい荒唐無稽な展開になるため、残虐な表現はほぼない。また、それらの表現がメインでもない。特に狩猟は貴族文化の中に根ざしているものとしての狩猟である。
対象は、小学校中学年から。
難しいテーマのない、純粋な読み物である。