あらすじ
がまくんとかえるくんを主人公とした短編が五本、収録されている。
がまくんとかえるくんは親友同士。この二人のかわいらしい親交がメインに描かれている。
「はるがきた」
四月になって春が来たので、かえるくんはがまくんを起こしに行く。しかし、がまくんは眠いので、なかなか起きてくれない。五月の中頃になったら起こしにきてくれという始末。それではかえるくんは五月の中頃までがまくんがいなくて寂しい。そこでかえるくんは……。
「おはなし」
病気になったかえるくん。看病するがまくんに、かえるくんはベッドの中から、お話をしてほしいと頼む。
いいとも、と請け合ったものの、がまくんはなかなかお話を思いつけず……。
「なくしたボタン」
遠くに出かけたがまくんとかえるくん。ようやく帰ってきたとき、がまくんは上着のボタンをひとつ、なくしてしまったことに気がついた。
二人は帰ってきた道のりを逆に巡って、ボタンを探し続けるも、なかなかがまくんのボタンは見つからず……。
「すいえい」
がまくんとかえるくんは、川で水泳することに。
がまくんは水着に着替えるので、見ないでほしいという。がまくんが言うには、自分の水着姿はとても変なので、見せたくないというのだが……。
「おてがみ」
がまくんが悲しそうな顔をしていたので、かえるくんはどうしたのかと尋ねる。すると、がまくんは自分はお手紙を一度ももらったことがなく、手紙を待っているときがとても悲しいのだという。
それを聞いたかえるくんは、大急ぎで家に帰り……。
がまくんとかえるくんのかわいらしい友情を描いた一冊
読みつがれる絵本として、不動の地位を築いている、がまくんとかえるくんシリーズ。
1972年に第一刷が発行されてから、今に至るまで、愛読されている絵本だ。
ちょっと悲観的で神経質、心配症なところがあるがまくんと、前向きで楽観的で細かいことにはあまりこだわらないかえるくんの、ほのぼのする日常のエピソードをつづった短編集だ。
かわいらしくもほのぼのとする二人の友情は見ていると、心が温まり、ほほえましい気持ちになる。性格が違うからこそ、がまくんとかえるくんの友情は深まるのだろう。
後ろ向きな思考に陥りがちながまくんを、持ち前の前向きさで引っ張っていくかえるくんが頼もしい。がまくんもがまくんなりに、かえるくんが困っているときに何とかしようと努力する姿がほほえましい。
全編を通して、作者のかえるくんとがまくんの友情を見守る温かい視線を感じられる。作者の愛情を感じられるからこそ、がまくんとかえるくんの本は長い間、いろんな人に愛されてきたに違いない。
私の気に入りは「おてがみ」。
落ち込んでいるがまくんを元気づけようと、かえるくんのとった行動が愛らしい。二人の友情が末永くつづくことを予感させるようなお話だ。
そんな話を本の最後に収録するなんて、なんて素敵な終わり方をする本なんだろうと思う。
日常に疲れたとき、がまくんとかえるくんに何度でも会いに行きたくなる。
二人の友情は、心をほっとさせる不思議な力に満ちている。
文章量からすると
文章の量からすると、絵本というより児童書のくくりに近い。小学校低学年の子が一人で読むのは少し苦労するだろう。
おとなの目線からすると温かみのある味のある挿し絵が豊富に入っており、それがまた魅力的に映るが、全体的に色味を抑えた絵柄のため、鮮やかな色合いを好むタイプの子どもには地味と判断されがち。
お話自体はシンプルかつ分かりやすく、ストレートにお話の持つ温かみが伝わってくる。登場人物も最小限で短編なので、とても読みやすい。
児童向けではあるが、おとなが読むと心癒される一冊。むしろ、この一冊に引きつけられるのはおとなのほうかもしれない。