夕暮れ、お面をつけた少女が一人で遊んでいると……
絵で語る妖怪の話
文章が極端に少なく、絵がメインにも思える一冊。
繊細で緻密なイラストが、夕暮れの薄ら寂しさと不安な気持ちをかきたててきます。
絵は美しいのに、どこか落ち着かない気持ちにさせる内容です。
メインの女の子はなぜか古風なお面を被っています。
それがまた、表情が見えない不安をあおってきます。
古風なお面って、何だか不安な気持ちにさせますよね……。
夕暮れの情緒のあふれた場面から、次第に寂しく、不安な気持ちに。
吹き抜ける夕暮れの風を感じるようです。
少女は一緒に遊ぶ相手もおらず、一人で外を出歩きます。ついてくるのは黒猫一匹。
こんな夕暮れに一人で遊んでいると、やってきますよ。
──あれが。
とにかく絵が美しい一冊
絵が美しい。文章が少ないので自然と絵を鑑賞することになるのですが、夕暮れの寂しさや不安な気持ちを見事に描き表したイラストの数々だと思います。
少女の鮮やかなスカートが、夕暮れ色の風景に目を引きます。
子どもの興味をそそるような場所をめぐる、一人ぼっちのお面の少女……。
薄ら怖いモノとの邂逅を描いた、美しい絵本です。
物語性はあまりありません。雰囲気を楽しむ一冊でしょう。
妖怪「子取りぞ」
『ことりぞ』とは妖怪「子取りぞ」のことでしょう。
子を取る妖怪の話は全国各地で見られますが、名称はさまざま。
「子取りぞ」は島根県出雲地方で聞かれる妖怪で、夕方頃遅くまで遊んでいる子やかくれんぼをしている子をさらい、油を絞り取り、その油で南京皿を焼くと言われています。
子どもから油を絞りとるという発想が恐ろしい。
あんまり帰りが遅くなると「子取りぞ」が来るよ、と子どもを戒めていたのかもしれません。
この本の少女はからくも命は助かりましたが、もし帰りなさいといわれたときに帰らなかったら……?
参照先 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%A0%E3%81%97%E7%A5%9E#cite_note-10