多くの人が親しんだ、あかずきんの童話が、透明感のあるイラストとわかりやすい再話文でよみがえります。
多くの人が親しんだ童話、あかずきん
あらすじは書くまでもないほど長く親しまれた童話。この絵本では分かりやすい文章でお話がつづられています。イラストは透明感のある絵柄。あかずきんちゃんの赤い頭巾の色がひときわ鮮やかに映ります。
このあかずきんにもいろいろなバージョンがあるので、あらすじを紹介しづらいのですが……
この絵本のあかずきんのお話は、グリム童話版で、大抵の人がご存知のものになっています。この絵本の原文ではありませんが、グリム版あかずきんは青空文庫で読めます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001091/files/42311_15546.html
病気になったおばあさんを見舞うため、お見舞いのお菓子とぶどう酒を持って森に入ったあかずきん。そこにオオカミがやってきて、きれいな花が咲いているよと道草をそそのかします。おうちの人から注意されていたのにも関わらず、まあきれいなお花と花を摘みはじめるあかずきん。ここでもうすでに嫌な予感しかしないのですが、案の定、オオカミはおばあさんの家に先回りして、おばあさんをぱくり。ベッドにもぐりこんで、あかずきんを待ち伏せします。
おばあさんをぺろりとやられたことをしらないあかずきん、おばあさんの様子がおかしいことに気がつきながらも、ベッドに近づいていって……
「あら、おばあさんの みみ、なんで おおきいの?」
おおかみは、ぎくっと しましたが、すぐに こたえました。
「おまえの こえを よく きくためさ。」
「めだって、とっても おおきいわ。」
「おまえを よおく みるためさ。」
「じゃあ、その おおきな くちは?」
「かわいい おまえを たべるためさ!」
あかずきんも食べられてしまいました。
おなかがいっぱいになったオオカミはいびきをかいて一寝入り。そこへ通りがかった猟師が異変に気付き、オオカミの腹をハサミでじょきりと切ったらば、中からあかずきんとおばあさんが出てきました。二人は生きていたのです!
そのあと、三人でオオカミの腹に石を詰めて縫い合わせます。起きたオオカミはおなかが重くて死んでしまいました。
あかずきんは、今回の事に学び、みちくさしないでおうちに帰ったということです。
あかずきんやオオカミと七匹の子ヤギを読むたび思うんですけど、オオカミはお腹が切られて痛くて目を覚ましたりしないんでしょうか。
グリム版あかずきん、と思わせぶりなことを書いていますが、実はあかずきんにはペロー版もありまして、ペロー版のあかずきんは、細かいところが違うんですが一番大きな違いは、あかずきんとおばあさんが食べられてFin.になるところです(モノローグ的に教訓的なことが後でちょろっと書かれますが)。
今回の本はグリム版。しかも子どもにも読みやすいように、押さえる所は押さえて文章量をだいぶ絞った感があります。最後のオオカミの腹を縫うところも刺激的な構図はとらず、あくまでさらりと描いています。
昔から語り継がれてきた経緯を持つあかずきん。解釈は山のようにありますし、いろんな人がいろんな角度で再話してきました。ちょっと検索してみると、一時期はやった本当は残酷な童話の常連であることも分かります。
しかし監修の西本鶏介氏が「むずかしい解釈よりも危険を無事のりこえた女の子のお話として楽しませてあげたいものです」と書かれているように、本書はそんなふうに手にとってもらえたらなと思います。
……あかずきんの原型の話?
あれは遠慮なしの残酷さですから、調べるなら自己責任で……。
左に文章、右にイラストの構成で
一部のページを除いて、左に文章が書かれてあり、右にイラストの構成になっています。文章量をだいぶ減らしているとはいえ、低学年の子が一人で全部読むにはなかなか根気のいりそうな分量。
内容的に、女の子が好みそうです。
イラストはどちらかというとおとなウケしそうな絵柄。一対一で読んであげると喜ばれるかもしれません。