何かが足りない、ぼくはそれに気付いた。
その足りない何かをぼくは探しにいくことにした。
足りないかけらを探しにいく
黒一色の線と短文でつづられる詩のような童話。
何かが足りなくて楽しくないと気がついた「ぼく」が、足りない何か、「ぼくのかけら」を探して旅をします。
暑い日、涼しい雨の日、雪の日、ぽかぽか日和の日。
欠けているから速く転がれない。だから、途中でみみずと話をしたり、花の香りをかいだり、かぶとむしを追い越したり追い越されたり……野を越え、海を越え、山を登り、やっと見つけたかけらは、いやいやぼくはきみのかけらじゃないからと「ぼく」のかけらであることを否定。そうかそうならごめんよと「ぼく」はまたかけらを探しに出る……それから「ぼく」はいろんなかけらを見つけますが、なかなかぴったりのものが見つかりません。
いろいろなかけらと出会ったその先で、ようやく「ぼく」の欠けたところにぴったりはまるかけらに出会います。念願かなった「ぼく」は──
シンプルだからこそ、さまざまな解釈ができる
ページ数は多いですが、文章はとても短めで、読み終えるのに時間をとりません。
イラストもシンプルなまま進みます。それが逆に親しみやすく、魅力的に思えます。
内容もまたシンプルなのですが、シンプルゆえに、いろんな解釈をすることができます。多分、おとなと子どもでは解釈が全く違うでしょうし、同じおとなでも年齢によっては違う解釈をするでしょう。置かれた環境や状況によっても違う解釈が出てくることと思います。
おそらく、この作品に正解の解釈などはないのでしょう。
「だめな人と だめでない人のために」書いたというこの作品。
誰もが欠けた部分を持っていて、それを埋めようとしているのかもしれません。
その欠けた部分にぴったりとはまるかけらが存在するのかしないのか、ぴったりとはまるかけらを見つける事で果たして「楽しく」なるのかどうかも分かりませんが──それでも何かを探しているのは確かかもしれません。
続編もあるよ